はるくんのお父さんは神出鬼没。
学校生活のどんな場面でも突然現れて
「コラーっ!」
って怒鳴ったから、私ははるくんのお父さんの登場を心から恐れていた。
「なんでお父さん来るのかな?」
「いじめられていないかどうか、見に来てるみたい」
「ふーん」
私たちは運動会の訓練の成果で
右にも左にも、前にも後ろにも
ほんの少しもはみ出さずにきちんと整列できるようになって
小学校の卒業式を迎えた。
泣いている子なんて誰もいない…、って思ってたら
おいおい泣く声が聞こえてきた。
はるくんだった。
「はるくん、どうしたの?」
「みんなとお別れするのが寂しいんです!」
「そうなんだ、はるくんはお別れが寂しいんだね」
大きな声をあげてずっと泣いているはるきくんのおかげで
わたしたちの卒業は「楽しかった小学校生活」みたいになって
ほんのちょっとだけ良い感じになった。
はるくんのお父さんは世間の方を見ないで
はるくんの方だけをちゃんと見ていた。
小学校へ行く支度をしている娘を見ていたら、ふっとはるくんのお父さんのことを思い出して、
朝ごはんを食べながら話した。
「はるくんのお父さんってさ、すっごく良いお父さんだったんだね」
「うん、そうだった!恐かったけどね、ふふふ」
もりやゆうこ HSP・HSC/ギフテッド専門カウンセラー
