それから小さな女の子は、凡ての過去を愛しむように言った。。。

「いやなことがあってもね、心を今に集中させれば、忘れるのよ。人生は前に進むだけなんだから」

 

近所の人が挨拶を返してくれなかったって、わたしが愚痴をこぼした時に、娘はこう言った。

 

「よくある、よくある」

「えっ、よくあるの?」

「学校で挨拶当番やると、挨拶しない人ってたくさんいるよ。こどもはみんな挨拶するよ。しないのは大人ね。こどもと一緒にいる大人はする。一人で歩いている大人がしないのよ」

「えーっ、随分いやな思いをしているのねぇ」

「気にしない、気にしない。あらそう、挨拶したくないのね、分かった、はい次、次よ!いやなことがあってもね、心を今に集中させれば忘れるのよ。人生は前に進むだけなんだから」

 

 

別の日、娘はこうも言った。

 

「私ね、

いやな想い出は思い出しても良いんだけど、

良い想い出は思い出したくないのよ。

だって、その時に戻りたくなっちゃうじゃない」

 

良い想い出って、大学入学の折に実家を巣立っていったお兄ちゃんと暮らした日々のこと。

 

8歳の女の子は、凡ての過去を愛しむような目をして遠い空を見つめた。

 

もりやゆうこ HSP・HSC/ギフテッド専門カウンセラー